Winchester College

interview 19

どのようなことを期待して渡航しましたか?

「井の中の蛙は大海を知らねば。そして大海を知ったらどう変わるのか」をテーマに僕の留学生活は始まりました。僕は幼稚舎から慶應で、良くも悪くも外を知らず、自分を井の中の蛙ではないかと思うことがよくあったからです。日本とは全く違う、日本にいては経験できない環境の中で、新しくどんな人々と出会い、どんな体験が待っているのか、そして、そこで自分が何を感じ、何を考えるのか。素晴らしい環境だということは実際に行かれた先生から聞いて確信していたので、相手に何かを期待すると言うよりも、むしろ「名門ボーディングスクール」の胸を借りて、自分に様々な変化が起こることを期待して飛び込みました。
また、芸術、特に音楽に非常に力を入れている学校であるとも聞いていたので、国際コンクールで金賞を受賞している自分のピアノが、クラシック音楽の本場でどこまで通用するのかにも興味がありました。

留学を振り返って

期待以上の1年になりました。短い留学期間なので、多少無理をしても、出来ることには何でも挑戦し、如何なる機会も無駄にしたくないという気持ちで臨みました。
任意参加のものを含めて色々な活動に参加しましたが、僕の場合は、特にピアノの演奏を通して様々な機会を得て、新しい経験を積むと同時に、音楽仲間を始めとして、幅広い年齢・立場の様々な人々と親しくなることができました。学校中にレベルの高い演奏家たちが沢山いる中で、学校代表としていろいろな場面で弾かせて頂く機会に恵まれました。準備は大変でしたが、1年に満たない留学でウィンチェスターに僕を知らない人はいないと仰って頂くほど、多くの人々が僕の演奏を喜んでくれる姿に触れ、音楽で学校や地域の人々に貢献できるということも実感できました。
また、Kenneth Clarkという伝統のスピーチコンテストで銅賞を頂き、ウィンチェスターカレッジの長い歴史に名を残すことができたことは、非常に感慨深く、また自分の自信にも繋がりました。日本の龍安寺石庭について「詫び寂び」の精神と合わせて発表し、西洋の人々に理解が難しい日本的概念を説明し理解・共感してもらうことの難しさを痛感しましたが、先生方も非常に喜んで下さり、学長御夫妻を始め沢山の先生方、来賓の方々、代々ウィンチェスターだという卒業生の方々に祝福して頂きました。また、この時に経験させて頂いた晩餐会も、僕のウィンチェスターの印象を非常に強いものにしました。ウィンチェスターカレッジの誇るカレッジホールで行われる特別なもので、ファイナリスト6名とその家族だけが招待されるものです。大きな肖像画がいくつも掲げられたホールで、食事の始まりから終わりの掛け声まで、全てが伝統に則って行われる晩餐会を通して、自分も長い歴史の一部を担っていることに気が付きました。そう思うと、肖像画に描かれている人たちは遠い昔の偉い人ではなく、自分と繋がる身近な人にも思えて、歴史の一部に入り込んだような不思議な体験でした。歴史や伝統という言葉が重さのある実感できるものとして感じられた出来事でした。
このように、勉強以外にも自分次第で、様々なことにチャレンジできる沢山の機会が設けられているということはWinchesterの良い点のひとつです。「やってもやらなくてもいい」ことを「やる」ということは、逆に苦労を選択することでもあるので大変ですが、多少無理をしてでもこれらの機会を逃さずに、様々なことに自ら挑戦していくことで、新しい出会いがあり、次の扉を開くことができるのではないかと感じました。自分から求めれば必ずサポートしてくれる(僕の場合はスピーチ大会のファイナルの前に寮母さんに発音などをチェックして頂きました)人が身近にいること、成果に対して一緒に喜んで認めて下さることなど、留学生の自分をウィンチェスター生として大事に扱ってくれたことも、大変心強く、次への意欲に繋がりました。

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interview 19

授業について

応用数学、化学、生物を履修しましたが、どの科目も根本を理解することに重きを置いた授業で、高校範囲を跳躍した内容も頻繁に取り扱いました。
数学(further maths)・・・公式の証明に比較的時間を割くことの多い授業でした。数学は応用数学と普通の数学に分かれていて、それぞれレベル別に4~5個のクラスに分れていますが、応用数学の首席クラスに在籍したため授業レベル・宿題の量・質は他クラスと比べても群を抜いて高かったように思います。特に宿題は毎回かなり難しく、クラスの仲間と協力して問題に取り組むこともありました。
化学・・・これも数学と同じく、高校範囲を超えた内容を頻繁に扱いました。宿題などで課される問題のタイプが日本とは異なり、暗記中心では全く歯が立たないものでした。選択化学なので、大学で化学を専門とする人を前提にしている授業のレベルだと思います。
生物・・・3科目中圧倒的にレベルが高く苦労したのが生物です。使用している教科書がそもそも大学生物の教科書であることもあり、細部・複雑なところにまでこだわった非常にレベルの高い科目でした。度々課される様々なトピックについてのエッセイは慣れるまでは苦労しました。当たり前ですが、質の高い1000~2000語の科学エッセイを書くという作業は、その分野を細部にわたって理解していないと不可能で、エッセイの準備段階だけでもかなり時間がかかりました。
また、Div.というウィンチェスター独特の授業は、自分たちの身近なことから世界の様々な問題に至るまで目を向け、深く学び、自分の意見を持つことが求められる授業です。まず、古典文学から社会問題までの様々なテーマに対して知識を深め、それを自分の理解・意見に昇華させることから始まります。これをもとに自分の考えを発信し、それに対して他者からのレスポンスをもらうことで、テーマをより深く考察できるだけでなく、常に物事に対して関心・疑問を持つことの大切さを学ぶことができました。これは日本でこれまで経験したことがないことで、理解した上で自分の意見を持ち、議論もするために、特に当初は非常に苦労もありましたが、慣れてくるにしたがって非常に興味深く、毎回の授業が待ち遠しく思えるほどでした。特に、日本では物事に対して曖昧なことが好まれることも多いと思いますが、ウィンチェスターでは、論理性ということを繰り返し鍛えられました。僕が取ったアンケートでも、ウィンチェスター生が、学校の伝統として最も残したいものに挙がっていました。

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今後の留学生へのアドバイス

この留学は、唯一無二のまたとない機会です。大袈裟なようですが、高校生のうちにウィンチェスターでの生活を経験できるということは、自分の価値観、人としての経験値、ひいては自分の人生にまで多大なる影響を与えるほどの財産です。最も用意しておいた方がいいもの、これは気持ちだと思います。ウィンチェスターでの自分の可能性を想像して、大いに期待を膨らませておいてください。ウィンチェスターは必ず期待を超えてきます。そして現地では、物怖じせず常に一歩前に出る意識、これが本当に重要です。自分から行動しないと一年は風のように過ぎ去ってしまいます。何事にもひるまずに一生懸命挑戦してベストを尽くして下さい。僕の場合は、1学期目は自己存在証明(まずは本気で人脈づくり・そして周りから尊敬される人になること)、2学期目は限界を取っ払って様々な新しいことに恐れずに挑戦して、それに対して結果を残すこと、3学期目は学校・地域への貢献と周りへの感謝、自分自身と向き合うこと、をそれぞれテーマとして過ごしていました。具体的でなくていいので、それぞれ学期ごとに自分のテーマを決めておくことをお勧めします。
最後に、留学中目に見えて自分が成長した!と感じることは案外少ないと思います。しかし、僕らの分からないところで自分の何かが変わっている・成長している、これは確固たる事実です。僕も現地で辛かった時・自分の思ったような成果が出せなかったときは、これを信じて踏ん張っていました。世界レベルの名門校で学ぶ以上、苦労は沢山あります。覚悟を決めて、本気の一年を過ごしてほしいと思っています。

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