Shrewsbury School

interview 17

留学を志した時期はいつ頃ですか

過去にイギリスで暮らしたことがあり、ぜひまたイギリスで学ぶ機会を作りたいと思っていたので、高校受験前に志望校について調べていて、この派遣留学制度について知ったときから応募したいと考えていました。女子校に入学してからは、費用や帰国してからの勉強量などを現実的に考えて、それでも留学したいと思ったので応募しました。

留学を振り返って

文系科目では期待通り一つのテーマについて深く学ぶことができました。特に歴史の授業では、エリザベス朝~チャールズ1世の専制政治開始までの71年間を一年かけて学ぶことができ、この時代についての理解が大変深まりました。逆に理系科目では、日本の授業のような応用問題はあまり扱いませんでした。さらに、教え方が丁寧で一つの内容に時間をかけるので、わかりやすかったです。
授業は、思ったより宿題以外の個人作業の少ない講義型のものでした。特に、文系科目では先生が資料やPowerPointを使って解説し、生徒が質問をする、という形式が一般的でした。先生によっては時々生徒同士で意見交換をさせたり、プレゼンテーションをする時間をとってくださることもありました。Mathsの授業では、先生が例題を解説し、その後教科書の問題を解いて質問があれば先生に聞いていました。
テクノロジーを使うことは予想通りで、宿題や連絡事項などが学校専用のクラウドで管理できて、とても便利でした。思ったより理系の生徒が占める割合が少なく、さまざまな生徒が理系に限らずスポーツ・ディベート・芸術・エッセイなどそれぞれの得意分野で活躍していて、学校側も特に科学分野を推しているようには見えませんでした。こうした環境は、自分の興味のある分野の実力を伸ばすのに最適で、私も学業のほかに大好きな西洋史・美術史の情報集めや史跡巡りをしたり、趣味の切り紙の作品を作ることができました。周りの人も私のこういった趣味を馬鹿にすることなく、お互いの好きな分野を尊重する雰囲気がありました。
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週末に近隣の街に出かけましたか?

私はShrewsburyの歴史に興味を持っていたので、授業が午前中で終わり、課外活動までの時間が空く木曜日の午後や土曜日によく町に行って散歩や史跡巡りをしていました。Shrewsburyは歩んできた歴史の跡を色濃く残す町で、中世の白黒のハーフ・ティンバー様式の家や、18・19世紀の装飾を施された店がそこら中に見えて歩いているだけで西洋建築様式史の勉強になります。道や主要な建物の配置などはダーウィンが生きていた時代はおろか、中世からあまり変わっておらず、特に「Shut」と呼ばれる細い路地に入るとタイムスリップしたような気分になります。Shrewsburyの町は魅力にあふれていて、まわりきれなかった博物館や名所があるのは本当に残念でなりません。日曜日に外出することもありましたが、日曜日には閉まっている店や観光地が多いためたいてい寮にいて宿題をしていました。

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学校の施設について

Shrewsbury Schoolは歴史のある学校なので、敷地内にも古いつくりの施設と新しい施設が混在しています。古い施設でも内装はきちんと現代の設備を取り入れているので普段困ることはありません。むしろ、歴史を感じる建物の中で学び暮らせることにわくわくしたくらいです。特に、Moser Libraryという校内の図書館は素晴らしかったです。本、生徒用の自習スペースやコンピューターがあるのはもちろん、驚くべきは何百冊もの貴重な古書を所蔵していることです。「種の起源」初版などのダーウィン関連の資料をはじめ、「ニュルンベルク年代記」、「欽定訳聖書」、エラスムスの「校訂版新約聖書」など日本でも有名な本がたくさんあります。16世紀の生徒名簿やギリシャ語の教科書、ダーウィンに次いで著名な卒業生のサー・フィリップ・シドニーの詩集「アルカディア」等、パブリックスクールとしての歴史を感じさせる蔵書が多いのも特徴です。これほどまで充実した古書のコレクションはなかなか日本では見られないだろうと思います。
またChapelは、Shrewsbury Schoolが伝統的なイギリスのパブリックスクールであることを最も如実に示す施設です。1880年代に学校が今の場所に移ってから最初にたてられた施設の一つで、厳めしいゴシック・リヴァイヴァル様式の外観はまさに19世紀の建築といった感じがします。内装は一度火事に見舞われているので当時のままではありませんが、それでも大きなオルガンや濃い青と赤に塗り分けられた柱、星をちりばめた天井やキリスト教の歴史の名場面を描いたステンドグラスは壮麗で、初めて入った時には見とれてしまいました。毎週金曜日と日曜日のChapelでは聖書の抜粋やチャプレンのお話を聞いたり、賛美歌を歌ったりして長時間座っていましたが、長いベンチにはクッションがしいてあって快適でした。

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授業について

私はHistory、Geography、EconomicsとMathsの四教科を選択していました。 Shrewsbury Schoolでは、一つの教科がさらに二つに分けられ、それぞれ別の先生が教えています。例えば、GeographyはHuman Geographyといって社会にかかわるテーマ(貧困や健康問題など)を扱うセクションと、Physical Geographyという自然にかかわるテーマ(気象や地球温暖化等)を扱うセクションに分かれています。
Geography、EconomicsやHistoryなどの文系科目は、先生がPowerPointや配布資料に解説を加える講義型の授業で、狭いテーマについて詳しく学ぶのが特徴です。例を挙げると、HistoryのBritish Historyのセクションではエリザベス朝からチャールズ1世の専制政治までの71年間を一年かけて学び、Human Geographyでは「Spatial Inequality and Poverty」というトピックに約一学期半費やしました。このように女子高の授業であったら長くても一週間で終わってしまうような内容に長い時間をかけるのは、ケーススタディや専門家の意見などを取り上げることで、多角的に事象をとらえたり、自分や他人の主張の根拠を説明したりできるようにするためです。例えば、教科書で「メフメト二世が1453年コンスタンティノープルを攻略した」という歴史的事実を習ったとすると、Shrewsbury Schoolの授業では、「なぜメフメト二世は(過去のスルタンたちが失敗した中)コンスタンティノープルの攻略に成功したのか」「コンスタンティノープル攻略が及ぼした影響は何だったのか」といったところまでかなり詳しく学びます。先生によっては、さまざまな歴史家の意見を取り上げ、どの意見に一番賛成できるかエッセイを書く宿題を出してきます。「文系」とされている教科の中でも比較的理系に近いEconomicsでも、日本の高校ではおそらく扱わないであろう高度な経済モデルや、時事問題についての知識が求められることがあります。
私が選択した唯一の理系科目であるMathsは、方程式や関数などの「Pure Mathematics(純粋数学)」と統計、確率などを扱う「Applied Mathematics(応用数学)」に分かれています。いずれもまず先生が例題を解説し、その後生徒が教科書かプリントの問題を解いて質問があったら先生に聞くという形式をとっています。どちらもまずは連立方程式などの女子高の1年生でやるような簡単な内容からスタートし、徐々に高2・高3でやるようなテーマを扱うようになってゆきます。こちらは日本の数学と違ってハイレベルな応用問題は出ず、授業の進みがゆっくりで少人数クラスのため質問がしやすいこともあり女子高の数学よりも簡単な印象を受けました。

今後の留学生へのアドバイス

過去の派遣留学生の報告書を読むと、「日本にいるうちに英語の勉強をしたほうがよい」という意見が目立ちます。私も、専門用語を使いこなす必要がある教科や高度な英語力が要求される教科を選択した場合は、英語の勉強はしたほうがいいと思っています。
しかし、それ以上に、私は派遣留学生の方々はあえて日本での生活を満喫しておくべきだと思います。今、日本にいるうちに、もう一度行きたい場所、食べたいもの、学びたいこと、会いたい人など、やりたかったのに先延ばしにしていたことはこの機会にすべてやっておくべきだと思います。同時に、日常を大切にし、留学先での新しい「日常」にとってかわられる前にじっくり楽しんでおくとよいと思います。そのうえで、貴重な留学生活を目いっぱい満喫してきてください。
また、その中で、自分はどんな人なのか、どうなりたいのか、今までどのようにして居場所を作ってきたのか、留学してどのように成長したいのか、そのためにはどうするべきなのかなど、自らのアイデンティティや目標についても考えておくべきだと思います。これは留学生活を有意義なものにする助けになるでしょう。さらに、留学中は文化の違いや生活の変化の影響で、アイデンティティの危機に見舞われる可能性があります。そこであらかじめある程度自分の輪郭が見えていれば、経験を糧にしてもう一度自己を固めるのに役に立ちます。
楽しい留学生活になることを祈っています。

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